■ 画像・音声同時伝送の実験 (簡易版) ■ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
SSTVでCQを出す場合、まず画像で「CQ SSTV」を送るコトが多い。これに対する応答は、画像であったり、音声であったりする。どちらの場合でも画像と音声は別々に送っている。勿論、CQだけでなく通常のQSOでも、画像と音声は交互に別々に送っている。これは、初期の白黒SSTVの時からの慣習である。ところで、最近のSSTVはカラー画像の全盛である。カラーの場合、情報量が多い分だけ伝送時間も長く要し、1枚送るのに1分以上かけている場合が殆どである。この間、送信側も、受信側も1枚送るのに「ポケーッ」とヒタスラ(?)待っている。この時間を長く(感じるか/感じないか)は人それぞれであろうが、HYDは長く感じる方だ。1枚送るのに8秒しか要しない白黒SSTVを長い間楽しんだ経験があるからであろうか。もっとも、同じ画像を3〜4枚送るので、これの3〜4倍は要していたのだが。 さて、この待ち時間を利用してコーヒー・ブレークをしたり、メモを取ったり・メモをヒモ解いたりと、これを「ポケーッ」とせずに、積極的に利用されている方は多い筈。MMSSTV開発者のJE3HHT森OMや、旅WACAでアクティブなJA1CJB熊谷OMも積極派である。イロイロな方の話をお聞きすると、この時間を有効利用、あるいはちょっとクツロぐ時間に当てている方が殆どのようだ。「これがSSTVの良いトコロである」と力説されるOMも多い。早い話が、画像と音声とは交互に送るのがSSTVらしくてFBという方が大半なのである。 それでも、あえて画像・音声の同時伝送(VuP:Voice under Picture)の実験である。理由は単に「面白そう」だから。で、実用性は上記の状況を考えると、非常に「?」なキワモノである。まぁ、アマチュア無線だからネェ、さほど実用性を追求する必要性はなく、面白さを追求するコトが重要だと思っている。 画像・音声同時伝送と言っても、技術的に難しい訳ではない。単に両方の信号を合成して送り、受け側はこれを分離するだけである。注意するのは、SSTV信号と音声の二つの信号を伝送するため、スプラッターに注意するぐらいであろうか。でも・しかし、これがナカナカに難しい。レベル調整が難しいというか、理屈が分からない人が多いようである。HYD個人としてはSSTVとは認めがたいディジタルSSTVでも、このスプラッタを撒き散らすOMが多くて、ズイブン問題になっている。 簡単な例で、1KHzと2KHzの2つのサイン波を入れた場合を考えてみよう。先ず1波の時に、1Vの入力で歪が少なく100Wの出力が出せる無線機があったとしよう。この時、 |
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@2波を入れてスプラッタが出ないようにするには、2つの 入力電圧を何Vにしたら良いか? Aその時、普通の電力計(平均電力計)では何Wを表示するか? Bその時、2波の内、1波を停止すると何Wを示すか? |
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これが簡単に答えられるようだったら、何らレベル調整は難しくはない。というか、これが分からなかったら、画像・音声同時伝送の実験は止めましょう。ディジタルSSTVに出るのも止めて下さい。スプラッタをマキ散らしてしまい、SSTVの評判を落とすだけ。 −−理屈が分からなくても結構です、ピーク電力計を新たに入手して、上記@〜Bを 実際に試して下さい。レベル調整をどのようにすれば、スプラッタを撒き散らさな いように出来るかが理解できると思います。 さぁてとぉ、先ずは同時伝送の簡単な実験をしてみよう。実際に電波を出して実験を行うには、電波型式の変更申請が必要で、予め許可を得る必要がある。この型式は「J8W」である。当初、「W8W」という型式かと判断して申請しようとしたが、念のため保証認定するTSS株式会社に相談したところ、TSSでは総務省と相談し、この「J8W」で申請するよう整理された。早速、変更申請し、現在「J8W」の許可を得ている。参考までに、無線工事設計書の付属資料の抜粋を示す。 |
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SSTV・音声同時伝送装置(下記2信号を混合して伝送) <電波型式 J8W> a. SSTV信号 SCFM方式(実際には、パーソナルコンピュータによる 数値演算型副搬送波周波数変調方式) 副搬送波周波数 Fo 2100Hz (白レベル) 2044Hz (黒レベル) 2300Hz (同期信号) 1900Hz 最高映像周波数 F 400Hz b. 音声信号 fc1500HzのLPFを通過した音声信号 |
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スペクトラムのイメージ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
電波を出さないで、机上で実験する場合には、当然この申請は必要ない。まずはタイトルのように簡易な実験を行ってみる。この時、アイコム製の無線機で、SSTV信号をリア・パネルのACC端子から入れているのであれば、送信は非常に簡単である。というのも、ACC端子からSSTV信号を入れた場合、ICOMの設計思想なのか、Mic入力は生きていて、音声と画像信号は両方出てしまうのである。わざわざ合成する必要はない。ICOM製以外では、画像信号と音声信号を合成しなければならないが、これは簡単な抵抗による合成で大丈夫である。手を抜かない実験ならば、SSTV信号に影響を与えないように、音声信号をLPFに通さなければならない。でもLPF無しの簡易実験レベルでも、音声レベルを大きく下げれば、思ったより画像への影響は少ない。というか、殆ど問題なし。でも、さすがに音声側はSSTV信号を取り除いてあげないと、「ピィー・ピロ・ピー」のヤカマしい音で、音声の了解度は1か2である。ここで「ピー・ピロ・ピー」音を抑圧する受信側に挿入する簡単なLPFの登場である。 HYDが実験した簡単に入手可能な部品で製作できるLPFをご紹介しよう。単なるπ型のLPFを3段シリーズにしたものである。製作には精度の高い部品を使用するのがFBなんでしょうが、高精度なマイクロ・インダクタの入手が出来なかった(というか、市販されているのかしらん Hi)ので、全て普通のパーツ屋で販売されている部品で製作した。「まぁ、実験だからネェー」 Hi 。このLPFは、入手可能な部品となるように、周波数・インピーダンスをイロイロ変えて決定した。回路図は次のようにバカバカしいほど簡単なモノです(当初はLPFをOP−AMPで製作したのだが、製作の容易性を考え、LCによるパッシブ型に変更)。 |
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・フィルタのタイプ :λ/4型LPF ・カットオフ周波数 :1.5KHz ・入出力インピーダンス:210Ω このLPFの特性であるが、精度の悪い部品の筈で、キッチリと整合も取れていない筈だが、次のようになった。 |
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「それなり」の特性に仕上がっている。どうやら、精度はさほど必要ないようである、ウレシヤ。ヘッドフォーンで聞くならば、このLPFの後に200Ω:8Ωのトランスを入れて、直接ヘッドフォーンを接続してOKでしょう。...が、AMP用ICであるLM386がジャンク箱に眠っていたので、これを有効活用して、インピーダンス整合を行い、スピーカーを鳴らした。どうせ簡易実験用である(くどい!)、スピーカーも小さな安物で十分である。実際に、このLPF+AMPで狭帯域SSTV信号を聞いてみたのだが、残念ながら1900Hzの同期成分を中心にピー・ピロが結構聞こえて来た。この音が割と耳障りに感じたので、最終的には10mHのインダクタと0.7μF(0.22+.47uF)とを直列にした1900Hzのノッチフィルタを入れた。これにより、耳を澄まさない限り、ピロピロ信号は聞こえなくてFBとなった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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■簡易実験結果のまとめ■ 「簡易実験だから」を理由に大幅に手を抜いた、画像・音声同時伝送であるが、まとめると次のような状況であった。 ■送信条件 ・送受ともMMSSTV(Ver.1.11G)の使用が大前提。 ・SSTVの型式は新たに付け加えられた狭帯域モード。 (1900Hzの同期と、2044〜2300Hzの画像) 【MP73-Nモード、MC180-Nモードなど】 ・画像はごく普通の画像と白黒のコントラストの強い画像等でイロイロ比較。 ■受信結果 ・特に送信側の音声にLPFを入れていないが、音声出力を最大出力の1/5近くまで出しても、 画像にあまり影響を与えない。これはMMSSTVの素晴らしい設計によるトコロが大である。 ・受信した音声は当然に高音部は出ないが、想像したよりはFBな音である。正直な話、誰が 喋っているのか分からないのでは、と思っていたのだが、ナカナカどうして、了解度は高い。 ■実用性 ・冒頭の通り、これは個人の判断にユダねます。HYDの私見では、V/UHFでのQSBが ない状況で、ローカル局とラウンドQSOしながら画像を送るのにはズイブン面白いと思う。 スピーディなQSOとなり、多数局とのラウンドでもテキパキとQSO出来ると思われます。 話しもハズむのではないかしらん。 ・今回、FMでは試していない。QRNやQSBが少なく、またマイク入力レベルに注意する ことが少ない分、より実用性が高いかも。 次回は、送信の音声にもLPFを入れた本格的な(というか、普通の)実験の報告をする予定です。 <乞うご期待> |
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